保持命令の制度(同法 105条の4ないし105条の6,200条の2,201条)を設け,刑罰による 制裁を伴う秘密保持命令により,当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的 で使用すること及び同命令を受けた者以外の者に開示することを禁ずることができ るとしている趣旨は,上記のような事態を回避するためであると解される。
特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,仮処分命令の必要性 の有無という本案訴訟とは異なる争点が存するが,その他の点では本案訴訟と争点 を共通にするものであるから,当該営業秘密を保有する当事者について,上記のよ うな事態が生じ得ることは本案訴訟の場合と異なるところはなく,秘密保持命令の 制度がこれを容認していると解することはできない。
そして,上記仮処分事件にお いて秘密保持命令の申立てをすることができると解しても,迅速な処理が求められ るなどの仮処分事件の性質に反するということもできない。
特許法においては,「訴訟」という文言が,本案訴訟のみならず,民事保全事件 を含むものとして用いられる場合もあり(同法54条2項,168条2項),上記 のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば,特許権又は専用実施権の侵害差止 - 3 - めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許 権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,秘密 保持命令の申立てをすることが許されると解するのが相当である。
5 以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。
論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。
そして,原々決定を取り 消した上,更に審理を尽くさせるため,本件を原々審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
再審査の困難さ 米国には,一度特許された発明については,査定系の再審査(ex parte reexamination)と,当事者系の再審査(inter partes reexamination)の2つの方法があり,後者は1999年〔平成 11年〕改正法によって新設されたが,1999年〔平成11年〕 11月29日以前の出願の特許については対象とならないため, 一度登録された特許を無効にするには,前者の査定系の再審査し かない。
しかし,「アメリカ特許法実務ハンドブック」(甲250)によ れば,「査定系の再審査では特許を現実に無効にすることは困難 であり,むしろ特許権者が特許の有効性を追認させて,特許権を 強化するために利用されてきた。
すなわち,第三者が積極的に参 加をして特許を無効にするという制度(わが国でいう無効審判の ような制度)は事実上存在していなかった。
」(271頁)という のが米国での実情である。
しかも,第三者が乙11の5刊行物を理由にこの査定系の再審 査の請求を米国特許庁に対して行う道はあったのに,誰もしなか ったというのが現実である。
それほど米国での特許は一度特許さ れると効力が強い。
したがって,一審被告の無効主張は,米国における特許制度と その現実を無視したものである。
(キ) 海外特許3が有効であること a 一審原告らの主張及び原判決の判断 - 198 - この点に関する一審原告らの主張は原審において主張したとおりで あり,海外特許3が有効であるとの原判決の判断は正当である。
b 一審被告の主張に対し 一審被告が海外特許3について無効主張をする根拠は,第2発明, 第5発明,海外特許1及び2でも根拠としている乙11の5刊行物(特 開昭53−70700号公報)と,乙13の4刊行物(特開昭61− 37447号公報)である。
しかし,上記発明において主張したとおり,乙13の4は反転印字 と無関係のものである。
また乙11の5刊行物については,海外特許 1及び海外特許2で主張したのと同様に,なんら無効事由とならない。
(2) 一審被告は本件各発明を実施していること この点に関する一審原告らの主張は,以下に述べるほか,原判決第2,3, (2),ア(18頁以下)記載のとおりである。
ア第2発明 国内実施品として,クリアテープカセットとの組合せが除かれることは 争わない。
イ第5発明 専らPCと接続するタイプで印字制御手段を備えないものと,テープが 本体の上面側から排出されるタイプのものが除かれることは争わない。
ウ海外特許1 (ア) 原判決の海外特許1についての認定は,誤って公開公報(甲20の 7)に基づいた翻訳が提出されたため,その後の審査における補正が反 映されていないものであり,その限度において誤りである。
もっとも,上記補正はその前後において有効性に関して実質的な差を 生ずるような違いはなく,補正後の請求項によっても従前の一審原告ら の主張や原判決の判断はそのまま妥当するものである。
すなわち,海外 - 199 - 特許1の公開公報(甲20の7)と特許公報(乙155)の違いは,請 求項1に請求項3の要素が取り込まれ,請求項の番号が繰り上がった点 のみで,実質的な差はない。
そして,両者の実質的な差である請求項1 に請求項3の構成要素が追加されていることによって原判決の判断が影 響を受けることはない。
(イ) 海外特許1につきパソコン接続専用機種が請求項1の7E’を充足 しないことは争わない。
もっとも,PC(パソコン)接続専用タイプ(PT−2420PC〔実 施品番号:87〕,PT−PC〔同:36〕,PT−9200PC〔同: 83〕,PT−9200DX〔同:84〕,PT−2500PC〔同:8 5〕,PT−9500PC〔同:88〕)は,平成6年(1994年)に 初めて導入されたものの,平成15年(2003年)半ばまでの累計販 売額は,欧州向けのPT−2420PCの●●円と,PT−PC,PT −9200PC,PT−9200DX,PT−2500PC,PT−9 500PCの●●円程度(全世界向け売上合計●●)である。
したがっ て,欧州販売分の合計は●●円程度にすぎず,ラミネート式本体の全売 上げである●●円の●%にすぎない。
(ウ) また,一審被告が非実施を主張する記録テープが装置の前後方向に 送られる機種(PT−220〔同:76〕,PT−210E〔同:77〕, PT−2480〔同:80〕,PT−2460〔同:82〕,PT−12 50シリーズ〔同:62〕,PT−200シリーズ〔同:74〕,PT− 1200シリーズ〔同:75〕)は,平成7年(1995年)に初めて 導入されたが,平成15年(2003年)半ばまでの欧州での累計販売 分は,欧州向けのPT−220,210E,2480,2460,12 50シリーズの●●円と,PT−200とPT−1200の●●円程度 (全世界向け売上合計●●)である。
したがって,欧州販売分の合計は - 200 - ●●円程度にすぎず,ラミネート式本体の全売上げである●●円の●% 程度にすぎない。
(エ) 以上によれば,海外特許1のうち一審被告が実施されていないと主 張する対象品は,全ラミネート式ラベルライター本体の売上げの●●程 度であり,他の●%は海外特許1の請求項1,請求項2,請求項3,請 求項4,請求項5,請求項6を実施しているものである。
エ海外特許3 海外特許3の請求項3(請求項1の従属項)及び請求項10については, 一審原告らが原審から実施を主張していなかったものである。
これに加えて,原判決で非実施と認定された請求項6に従属する独立の 請求項7については,当審において実施を主張しない。
また,対象品群jの本体のうち原判決で非実施(9G,9G’及び9G” の非充足)と認定されたパソコン接続専用モデルについても,当審におい ては争わない。
さらに,記録テープが装置の前後方向に送られる機種の非実施について も,当審においては争わない。
なお,海外特許2については,パソコン接続専用モデルも記録テープが 装置の前後方向に送られる機種も実施している。
(3) 超過売上高の算定について アラミネート発明に対する独占のポリシー (ア) ラミネート技術の非ライセンスポリシー a 原判決は,一審被告がキングジム社に対し,平成14年のキングジ ム契約時にラミネート技術を許諾したと認定し,キングジム社が侵害 品(ラミネート式ではない)を販売開始した平成12年から和解した 平成14年までの期間を境にして,それ以前とそれ以降の3つの時期 に分け,平成12年以降については明らかにラミネート発明に係る独 - 201 - 占の利益(率)を極端に減じている。
b しかし,一審被告がキングジム社に対しラミネート技術の使用許諾 をすることはあり得ない。
(a) まず,キングジム契約書(甲176)において,●●(省略) と記載されているのは,明らかにラミネート式ラベルライターに係 る技術を許諾対象から除外する規定であり,一審被告がキングジム 社にOEM供給した製品が含まれないことをわざわざ規定したもの などではない。
それにもかかわらず,原判決がキングジム契約第1 条(1)を単なる許諾製品に関する例示規定にすぎないと理解し,同 条項が許諾の範囲を画する意味を持たないと位置付けたことは,重 大な誤りである。
すなわち,一審被告はキングジム社に対し,非ラミネート式(M 型)ラベルライターとラミネート式ラベルライターの二種類をOE M供給していた。
仮にキングジム契約に「キングジム社が販売して いるラミネートタイプのラベルライターは,被告が製造・供給した ものであり,これについては許諾(実施料の支払)の必要がないこ とを明確にする」という内容を盛り込むのであれば,一審被告が製 造・供給しているラベルライターにはラミネート式と非ラミネート 式の2種類があるのであるから,その規定は,●●となるはずはな く,「(ア) ラベルライター(ブラザーが製造してキングジム社にOE M供給したものを除く)」とするか,「(ア)ラベルライター(ラミネ ートラベルを使用するもの,およびM型のテープを使用するものを 除く)」とされなければならない。
そうでなければ,OEM供給品 である「非ラミネート(M型)」が実施料の対象に含まれてしまい, 一審被告が主張する「OEM供給品を除く」という趣旨は果たせな いからである。
しかるに,実際の契約書にそのように書かれていな - 202 - いのは,OEM供給品を除くなどという趣旨ではなく,ラミネート ラベルを使用する製品すべてが除外されているということなのであ る。
さらに,それを裏付ける記載として,第1条(1)の「(イ)ラミネー ター」がある。
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